大人に贈る絵本(日本)

大人に贈る絵本(日本)

湯本香樹実さんの絵本

くまとやまねこ
   湯本香樹実(作) 酒井駒子(絵) 河出書房新社  (2008年4月刊行)

湯本香樹実(ゆもとかずみ)  1959年東京都生まれ。小説家。
  小説「夏の庭 The Friends」で児童文学者協会新人賞、児童文芸賞受賞。
  小説、童話、絵本の創作。絵本の翻訳も。  

酒井駒子(さかいこまこ)  1966年兵庫県生まれ。絵本作家。
  1998年「リコちゃんのおうち」絵本作家デビュー。
  国内外での受賞が多数あります。
   「きつねのかみさま」(あまんきみこ(作) ポプラ社) 日本絵本賞     
   「ゆきがやんだら」(学研) オランダで銀の石筆賞
   「金曜日の砂糖ちゃん」(偕成社) ブラティスラヴァ世界絵本原画展金牌賞、他
  書籍の装画なども多数あります。

「くまとやまねこ」は、第40回講談社出版文化賞受賞作品です。


大切な友、ことりが死んでしまいました。
くまは、ことりを箱に入れて大切にしています。
箱の中を見た森の動物たちは、困ってしまいます。
くまは、ことりのことを「忘れるように」と諭されます。
くまは、そんなことを言われてかたくなになり、
ドアに鍵をかけて、家の中に閉じこもってしまいます。

ある日のこと、くまはいい天気に誘われて外へ。
見知らぬやまねこと出会います。
やまねこは、くまの箱を見たいと言います。
箱を見たやまねこの言葉に、くまは驚きます。

やまねことの出会いがくまのキモチを和らげてくれます。
やまねこは、バイオリン弾きです。
やまねこは、旅人です。
やまねこの持っていたタンバリンには、どんないきさつがあったのか。

「ことりは死んでしまったけれど、大切な友でありつづけること」を
確信したくまは、新しい一歩を踏み出そうとします。

また新しい友を得ることができたくまは、幸せ者です。


湯本さんの物語世界を描く、酒井さんの寂寥感のある絵。
「暗い」感じがするものの美しく、
どこかから光が差している感じがします。
読み終わっても、すぐに本を閉じてしまいたくない一冊です。

いせひでこさんの絵本

ルリユールおじさん   いせ ひでこ(作) 講談社



ヨシタケシンスケさんの絵本

かみはこんなに くちゃくちゃだけど
         ヨシタケシンスケ(著) 白泉社  (2022年4月1日刊行)   

ヨシタケシンスケ(吉竹伸介)  1973年神奈川県生まれ。
                  イラストレーター。絵本作家。 
    児童書の挿絵、装画、イラストエッセイなど多岐にわたる作品を発表。
    第6回MOE絵本屋さん大賞第1位。(この後、大賞受賞の常連となります)
    第61回産経児童出版文化賞美術賞受賞など。

何かができるようになったり、
何かを思いついたり、
何かを見つけたり、
何かしたいことがあるんだけれど、
今は、まだ、ちょっと、ダメっだったりするとこもあったりして。

小さな子から年配の方までの小さなドラマが30作。
いいことがあっても、なんかマイナスになることもあったりして。

「いいこと」の後に「でも」「まだ」などと続いていきますが、
ラストは、逆になります。
それが、いいです。

網代幸介さんの絵本

てがみがきたな きしししし
         網代幸介(作) ミシマ社  (2021年6月22日刊行)

網代幸介(あじろ・こうすけ)  1980年東京生まれ。画家。

大きな郵袋をさげた髭の男性が、手紙を左手に高く掲げています。
郵便配達員さんですね。
大きな扉の左右には、”何やら”が蠢いているようにも見えます。
懐中電灯の細い光をかざしながら、郵便配達員さんは進んで行きます。
大きなお屋敷の住人たちは、皆、手紙を待っていたようです。

網代さんの絵が物語っていきます。
「きしししし」「ぐしししし」「びしししし」
「うれしいな」

最初に、この絵本の表紙と題名を見た時は、
この細身の郵便配達員さんが、
多くの人たちに手紙を配達してまわるのだろうと思いました。
「きしししし」がちょっと、気にはなったのですが。
この絵本の評判は高く、
網代さんの絵が個人的に好きなので、
見たい読みたいと思いながら、
刊行から1年も経ての読書となりました。
絵本を開いてみて、びっくりしました。
想像とは全く違ったものでした。
しかし、それは、「良い意味で」です。

そして、
郵便配達員さんの苦労がつくづくしのばれました。

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